日本財団助成事業における不適切な会計処理に関する第三者委員会調査報告書を受けた当協会の対応について

公開日 2024年6月30日

一般社団法人全国コミュニティ財団協会
会長 山田健一郎

 一般社団法人全国コミュニティ財団協会(以下、当協会)は、2024年6月18日付「日本財団助成事業における不適切な会計処理に伴う助成金の一部返還の第三者委員会からの調査報告書の受領について」において公表した調査報告書の内容を受け、関係者の責任の所在並びに処分、再発防止策、今後の対応などについてコンプライアンス委員会の提案をもとに、6月23日開催の理事会にて決定しました。

 その内容について6月24日の会員説明会、また28日の定時社員総会にて会員に報告いたしましたのでお知らせします。

 <目次>
1.第三者委員会調査報告書を受けて
2.再発防止策について
3.関係者の責任の所在と処分について
4.今後の組織体制の検討について
5.当面の組織体制
6.今後の取組み

1.第三者委員会調査報告書を受けて

 当協会では、「不適切な会計処理に関する第三者委員会」の調査報告書を2024年6月18日に公表いたしました。委員の皆さまには、限られた時間の中で調査にご尽力をいただきましたこと、また多くの関係者の皆さまにご協力を賜りましたこと、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 調査報告書は第三者委員会の調査結果と責任に基づいて執筆されたものであり、当協会が編集権限を持つものではありません。
 今後皆さまからいただくご意見は、再発防止やコンプライアンス・ガバナンスの強化に活かしてまいります。

2.再発防止策について

 第三者委員会の報告書により指摘された問題点、また提言を受け、コンプライアンス委員会並びに理事会での検討を経て、下記の通り、再発防止策についてご報告いたします。
 2019年度からの山田健一郎会長体制の下、当協会ではコンプライアンス・ガバナンス体制の拡充を進めてきておりましたが、更に皆様からの信頼に応えられる組織として体制構築をしてまいります。

報告書の提言事項取り組み済みの対策後の取り組み予定
コンプライアンス意識の醸成理事会の構成改革(実効性のある理事会機能の充実)当時の理事を除く現理事4名と複数の会員財団の参画の下、次期組織体制の検討委員会を設置し、検討を進めている。会員財団の声を踏まえ、法務・財務・会計的知見を持つ専門性の高い社外理事の就任も含め、従来の会員財団による互助組織的な運営からの変革を進めていく。2024年度内に臨時総会を開催し、新しい役員の選任を行う。
コンプライアンス遵守のための仕組みの導入経理規程や理事の職務権限規程等の各種規程を整備し、コンプライアンスを遵守するための仕組みの導入を進めている。また、コンプライアンス規程の下、外部委員を構成員に含むコンプライアンス委員会を設置している。顧問弁護士等に相談、理事会で協議し、導入した仕組みの実効性を高めるとともに、適時、必要な規程を整備し、運用していく。
役職員対象のコンプライアンス教育2021年度より、顧問弁護士等に協力いただき、当協会の役職員並びに会員財団を対象としたコンプライアンス研修を毎年度複数回実施している。継続して、毎年度、役職員等を対象としたコンプライアンス研修を複数回実施する。
地域コミュニティ財団構築への助成の意義を十分に理解させるための研修・教育未実施コンプライアンス研修とは別に、助成事業に関する倫理研修等を実施する。
不適切な会計処理を抑止するための組織づくり経理規程等を実態に合わせて改訂し、決裁責任者と経理担当理事を分け、会計処理に複数の目が入るようになっている。引き続き、不適切な会計処理を抑止するための事務の履行、監督を行う。
内部統制の構築利益相反取引の承認手続きの未実施理事会にて利益相反取引の決議を適切に行なっている。引き続き、適切に利益相反取引の決議を欠かさずに行う。
内部牽制の仕組みの充実/ルールを遵守するコンプライアンス経営理事会を適切に開催している。また、監事が理事会に出席しており、業務執行状況を確認している。引き続き、適切に理事会を開催し、監事に職務を遂行してもらう。受託・助成事業等には担当理事を複数名配置し、独断での業務執行がしにくい体制を構築する。
賃金台帳の整備、源泉徴収事務の履行賃金台帳を整備している。給与・報酬ともに源泉徴収事務を適切に行なっている。引き続き、適切に事務を履行していく。
外部アドバイザーの確保独立性の高いアドバイザーの設置2020年12月より、顧問弁護士が就任し、法的アドバイスを受けられる環境を整備している。また、2021年度に設置したコンプライアンス委員会では、外部委員として弁護士・公認会計士に就任してもらっている。顧問弁護士、外部のコンプライアンス委員だけでなく、法務・財務・会計的知見を持つ専門性の高い社外理事の就任について検討する。

3.関係者の責任の所在と処分について

本件の関係者の責任の所在と処分に当たっては、第三者委員会の調査報告書を参照の上、顧問弁護士の意見、外部の弁護士・公認会計士を構成員とするコンプライアンス委員会からの提案を受けた上で、理事会で最終決定しました。

調査報告書には、「当時の理事、監事全員に問題があったと言わざるを得ない」と記載があるように、通常、理事会又監事には、相互に牽制することが期待されていますが、当時の協会運営においてはそれが果たされておらず、当時の役員全員に善管注意義務違反・忠実義務違反があったと判断します。

 その上で、会計処理を主導した石原理事、それを容認した深尾前会長は、辞任勧告に相当すると判断しました。石原理事については、2024年6月23日付で辞任勧告をし、同日付で本人から提出されていた辞任届を受領しました。深尾前会長については、すでに2019年に辞任していることから、在職中ではないため実際に処分することはできませんが、在職中であった場合、どのような処分に相当するかをもとに検討した結果です。

 次に、深尾前会長と石原理事を除く、当時の役員については戒告処分に相当すると判断しました。直接的に会計処理に関わっていないものの、理事・監事としての責任を十分に果たすことができていなかった点を事由としています。なお、既に辞任済みの役員については在職中ではないため実際に処分することはできませんが、在職中であった場合、どのような処分に相当するかをもとに検討した結果です。処分時点で在職中だった有井安仁理事、小阪亘理事、鈴木祐司理事、志村はるみ理事、山田健一郎理事の5名については、2024年6月23日付で戒告処分としました。

 なお、上記処分とは別に、日本財団への返還額34,513,000円は深尾前会長、石原理事が全額返済すること、また内部監査や第三者委員会設置等の一連の対応にかかった費用は、戒告処分となった理事5名に対して全額負担を求めることを理事会として決議しており、本件によって当協会に生じた損害は上記7名に賠償義務を果たしてもらいます。

 続いて、2022年の日本財団からの返還通知以降の役職員等については、処分なしと判断しました。第三者委員会報告書では、現役職員に対する善管注意義務があったとはまで認定されていません。又、2022年の返還通知後、直ちに内部監査を行い、その後の日本財団の再監査にも応じていること、現在の体制については組織運営の脆弱だった点が大きく改善されていることなども鑑みて検討しました。ただし、日本財団との見解の食い違いや対外的な情報発信が遅れたことによって当協会への不信感が増大し、市民セクター全体への不信感増大につながりうる事態に繋がった点は大いに反省すべき点であったと言えます。

今回の責任の所在と処分を検討する中で、役員の多くが自身の財団経営を担う中、無報酬で重い責任を負って協会運営に携わっていること、協会運営にかかる法務・財務・会計的知見が欠けていること、収益事業がないため自己財源の調達が難しいことなど、組織運営上の課題を改めて認識しております。今後の組織運営のあり方については、上記課題を解消する方法を模索しながら、どのような組織のあり方が望ましいのか、引き続き、会員と意見を交わして検討してまいります。

4.今後の組織体制の検討について

 この度、当協会が関係者および日本財団、非営利セクターに対して与えた影響を考慮し、理事会は定款第49条に基づいて検討委員会を設置しました。検討委員会は2020年度以降に就任した理事で構成し、コンプライアンス委員会の提案を受け、理事会に対して今後の体制と再発防止策を踏まえた当協会のあり方を答申いたしました。答申の内容を以下の通り、報告いたします。

(1)検討事項
検討委員会では、以下の2点について検討しました。

①次の理事会体制の改善
②市民コミュニティ財団の役割の再検討

(2)理事会体制の改善
 2024年6月28日の定時社員総会での理事改選に向けて、第三者委員会の報告とコンプライアンス委員会の提案を受け、検討委員会は理事会に対して、今後の組織体制について提案しました。

定時社員総会では暫定の理事改選を行い、検討委員会に会員財団にも参画してもらい、継続して協議し、概ね3ヶ月以内に臨時総会を開催して新たな理事を選任すること。
暫定の理事には、2020年度以降理事に就任した可児卓馬、高橋潤、高山大祐、宝楽陸寛の4名を推薦すること。
また、暫定理事には、2018年当時の執行部から山田健一郎と志村はるみの2名も推薦すること。ただし両名の任期は1年と限定し、当協会が円滑に新しい体制に移行するまでの責任を果たすための措置とすること。
今後策定する新しいビジョンに基づき、2024年度1年間かけて、市民コミュニティ財団の役割やあるべき姿を検討し、専門家の知見を取り入れた再発防止のための管理体制を構築すること。

(3)市民コミュニティ財団の役割の再検討
 市民コミュニティ財団の役割について、以下の2つの重要性を確認しました。
・現在も継続している市民コミュニティ財団を各地に育成する助成プログラムの継続実施
・各地の市民コミュニティ財団との相互研鑽と学び合いの機会提供

 そのために当協会の説明責任の継続、課題への迅速かつ適切な対応、内部管理体制をはじめとする団体自治・監視強化、関係者との対話の継続が重要である。また、組織の改革を実行するために、信頼回復に向けた具体的な行動計画を示すことを重視して検討を行うこと。

5.当面の組織体制

 検討委員会の提案を受け、理事会は2024年6月28日の定時社員総会にて下記6名による暫定理事体制を提案しました。社員総会にて暫定理事が承認された後、同日開催した理事会にて業務執行理事の選出、会長、副会長の互選を行い、当面の組織体制を決定しました。

会長 山田健一郎(任期1年の限定的な任用)

副会長
高橋潤(任期2年)
宝楽陸寛(任期2年)

理事
志村はるみ(任期1年の限定的な任用)
可児卓馬(任期2年)
高山大祐(任期2年)

※会長をはじめとする理事は全員、業務執行理事。
※黒田陽介監事、山田泰久監事(任期4年)はそのまま就任。
※鈴木祐司理事(前副会長)、小阪亘理事(前副会長)、有井安仁理事は、任期満了に伴い、2024年6月28日の定時社員総会をもって退任。

6.今後の取組み

 今後の取り組みとして、以下を理事会及び検討委員会で検討を行います。

  • 各地の会員財団や支援先との対話の機会を設け皆様のご意見を直接お伺いする機会を増やし、適宜外部アドバイザーの意見を求めていきます。
  • 概ね3ヶ月以内に理事会を強化し新しいビジョンを提示し、2024年度の1年間の具体的な行動計画を策定します。

 これらの取り組みを通じて、皆様の信頼を取り戻し、法人としての責務を全うしてまいります。ご支援とご理解を賜りますようお願い申し上げます。

【本件に関するお問い合わせ先】
一般社団法人全国コミュニティ財団協会
メールアドレス web@cf-japan.org